足利市立美術館

栃木県の足利市立美術館から、展覧会やイベントの情報などをお知らせします。

足利の古民家を使ったアートイベント「はなうつわ」が行われました

美術館の近隣、足利市街の4ヶ所の古民家を使ったアートイベント「はなうつわ」が5月28日、29日の2日間開催されました。展示の様子をレポートしたいと思います。

 この展覧会では、主に陶芸で器をつくる作家8名(一人はガラス)の作品に、華道やフラワーアレンジメントの方たち5名が生花や樹木を活けて、共に場所をつくり上げていくという、とてもユニークなかたちでの展示が中心になっていました。

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「はなうつわ」案内状の表裏


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観覧者に配布されたマップ(呑龍文庫 ももとせ制作)

「はなうつわ」告知ページ→ http://hana.momotose.jp


 4会場の中で中心的な役割を果たしていたのは、市街の中心部である鑁阿寺参道近くにある、国の登録有形文化財にも指定されている大正末期の古民家「松村記念館」です。展示は1階と2階に分かれており、1階には陶器の作家の方たちの器などの作品が、古色のあるテーブルの上にそれぞれ美しく並べられ、2階の2間にはそれぞれ大作が置かれ、さらに床の間も有効に有効に使いながら展示が行われていました。

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堂々とした風格を感じさせる松村記念館の外観


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松村記念館1階の展示の様子(作品は赤沢元則さんの器)


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2階奥の間の展示(富田啓之さんの器と山田尚俊さんの花活け)


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2階床の間(山本順子さんの器と増野光晴さんの花活け)


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外の景色が美しい2階のもう一間の展示(作品がシルエットになっていますが丸岡勇太さんの器と塚越応駿さんの花活け)


 松村記念館から歩いて10分弱で、2つの古民家の会場がある雪輪町に到着します。この一帯、江戸期は足利藩の陣屋があったところで、かつては花街としても栄え、その後はスナックや居酒屋などが集まる社交街と呼ばれた飲み屋街の時代を経て、今は多くが閉店して廃屋にもなり、ところどころに住宅が残る静かな場所になっています。
 そうした場所の中の展示会場「古民家3」では、富田啓之さんの器と上野雄次さんの花活けによる展示が行われていました。会場となっている古民家自体は廃屋になって久しく、家屋としての命を一度は終えたような佇まいを感じさせる場所です。しかし、台所に並べられた器たち、家の裏側の景色が素通しになった奥の間に、森の生気を放出するようにそびえ立つ大きな陶のオブジェ、壁から天井を伝ってやはり生気を感じさせる樹木の蔦、裏庭差し込む光を受けて美しく輝きながら置かれた器など、古い家の造りをとてもうまく活かした展示が行われていました。窓の磨りガラスを通して入るやわらかな光もとても美しく、いすれも強い生気を含む作品たちと、家屋の古い木材の質感が混ざり合い同化することで、この家そのものが、無理に目覚めさせられるのではなく、おだやかに揺り起こされて蘇ってきたような印象を感じさせる展示でした。

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富田啓之さんの器と上野雄次さんの花活けによる展示が行われた「古民家3」

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台所での展示


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居間


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奥の間にそびえ立つ陶のオブジェ


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各部屋には樹木の蔦がはう


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差し込む光の中での裏庭での展示


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磨りガラス越しの光がやわらかい


 「古民家3」からほど近い、風格のある門と広い庭が特徴的な「古民家2」では、岳中爽果さんの器と増野光晴さんの花活けによる展示が行われていました。展示でまず目を引いたのが、広々とした縁側から奥に入り込んでいくように、部屋の空間全体を埋め尽くすように張り巡らされた梱包用の白いロープを中心にした展示でした。視界を覆うようなこの白いロープは、その空間の内側には、陶の作品のほか襖や家具類を飲み込みんで一つの白い塊となり、そうしたロープ自体が深い森で絡まる樹木の蔦を想像させる繊維の束のようにも思われ、この空間が一つの生命体であるような印象を感じさせてくれました。また、隣のもう一つの部屋の中央には、中に苺が盛られた器が一つ置かれ、ロープの部屋とは対照的に静かな空間をつくっていました。

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岳中爽果さんの器と増野光晴さんの花活けによる展示が行われた「古民家2」


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ロープで表された濃密な展示空間


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もう一部屋のおだやかな展示(器には苺が盛られている)


 最後に訪れた足利商工会議所そばの展示会場「古民家1」は、堂々とした2階建ての大きな家屋と蔵、広い庭をかかえた家で、ここでは蔵と家屋の1、2階を使って展示が行われていました。展示で特に印象的だったのは、家屋の1、2階の部屋をぐるりとガラス戸の広い縁側が取り囲んでおり、独特の透明度を感じさせる古いガラスを通して、外光が部屋の中に降り注ぐように入る中で、いずれも大作の器に、自生する植物の力強さを思い起こさせながらも、高度に洗練された花生けが行われて空間が創り出されていることでした。

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蔵と家屋が奥までのびて建ち並ぶ「古民家1」へのアプローチ


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蔵の入口


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蔵の中の展示(前田直紀さんの器と山田尚俊さんの花活け)


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家屋1階玄関脇の応接間での展示(丸岡勇太さんの器と山田尚俊さんの花活け)


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1階の2つの広間を使っての展示(山本順子さんの器と塚越応駿さんの花活け)


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1階の2つの広間を使っての展示(岳中爽果さんの器と曽我部翔さんの花活け)


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2階階段踊り場の展示(前田直紀さんの器と曽我部翔さんの花活け)


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踊り場か見た1階全景


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広い縁側から目に入ってくる光と景色が美しい1階の全景


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庭から見上げる家屋


 4つの展示会場めぐって感じたことは、いずれの展示でも、器たちは樹木や花によって、鑑賞のためだけではない新たな生命を持って活かされ、これら二つによって展示が行われる古い家屋も新たな生命を帯びて蘇るという、きわめて稀な場所がこのイベント全体を通じてつくり出されていたということです。また、会場となった古民家の成り立ちや大きさ、現在の管理の状態はそれぞれ異なりますが、それらを歩いてめぐることは、足利の街が長い間をかけて記憶してきた時間に、断片的にでも触れることでもあります。そうした古い時間とそれぞれが強い生命力を感じさせる展示が互いに引き合いながら場所がつくられていたことが、「はなうつわ」に大きな魅力を感じる要因なのではないかと思いました。






  1. 2016/05/29(日) 13:24:28|
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高崎で長重之展が開催されています

 足利市立美術館で4〜5月に開催されて記憶にも新しい「論語と足利学校展」で、論語をモチーフにした大作を制作・発表された長重之さんの個展「CHO SHIGEYUKI展」が、高崎市の老舗菓子店・ガトーフェスタハラダの本社ギャラリーおよび社屋を使い6月8日から開かれています。足利市立美術館が所蔵する作品もこの中で2点展示されています。6月7日の夕方には、一般公開に先がけてオープニング・レセプションが行われました。
「CHO SHIGEYUKI展」
6月8日(土)〜20日(木)10:00〜19:00
ガトーフェスタハラダ本社ギャラリー
群馬県高崎市新町1207(tel:0274-40-3622)
JR高崎線新町駅より徒歩15分

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展示の様子


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6月7日に行われたオープニング・レセプション



  1. 2013/06/07(金) 23:40:16|
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夏休み

小中学校の夏休みもあと一週間となりました。
美術館では、宿題をかかえた中学生が連日見学に来ています。
展示作品が、少しでもみんなの心に残るように・・・
願っています。
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  1. 2012/08/25(土) 13:05:37|
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