足利市立美術館

栃木県の足利市立美術館から、展覧会やイベントの情報などをお知らせします。

小学生を対象にした「作品の声を聴こう」が行われました

 9月18日(日)、「風景のかたち -前田真三と現代日本の風景写真」の関連プログラムとして、小学生を対象にした対話型鑑賞の会「作品の声を聴こう」が、14名の小学生とその保護者が参加して開催されました。
 「対話型鑑賞」は、もともとはアメリカで始まった美術の鑑賞法です。通常の作品鑑賞とは異なり、作品の意味や技法、作者に関することなどといった知識をもとにして作品と向かい合うのではなく、何の知識も持たずに一つの作品と時間をかけて向かい合います。そして、作品を観た時の感想やそこから想像されたこと、発見したことなどをもとに、「ファシリテーター」と呼ばれる司会役を中心にして、グループの中でそれぞれの感想や自由な発想を話し、互いに聴き合うという対話を通して鑑賞が深められていきます。
 司会役であるファシリテーターを務めるのは、さまざまな芸術のワークショップや講座を実施している東京のNPO団体ARDA(芸術資源開発機構)が運営する「対話型鑑賞研修」を修了した4名です。まずは美術館の多目的ホールに集合。ほぼ年齢ごとに分けた子ども3グループと、「対話型鑑賞」への参加を希望された保護者の大人グループにそれぞれファシリテーターが付いてプログラムが始まりました。
 最初は一グループで一つのテーブルを囲んで、自己紹介をかねて、アートカードを使った鑑賞のトレーニングが行われました。アートカードとは、古今東西の様々な美術作品の名品を一点一枚ずつのカードにしたもので、美術の鑑賞教育では近年広く使われています。今回は、国内の4つの国立美術館がそれぞれの所蔵作品を合わせて共同で作成したもので、一セット65点の作品で構成されています。ファシリテーターは、それぞれのグループの子どもたちに、直感的に好きな作品のカードを選ばせて、好きだと思った理由を問いかけることで、作品について自分で考えてことばにする「対話型鑑賞」の基本をさりげなくトレーニングしていきます。

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大人も含めて各グループで、自己紹介をかねてアートカードを使ったトレーニングをまず行いました


 それぞれのグループが少し打ち解けたところで、いよいよ全員で展示室に入ってのプログラムが始まりました。この「風景のかたち -前田真三と現代日本の風景写真」は、1980〜1990年代に風景写真家として一世を風靡した前田真三さんの写真70点ほどに加えて、「風景写真の中のかたち」というテーマをもとに選ばれた9名の現代写真家の風景作品50点あまりで構成された展覧会の中でプログラムが実施されました。
 鑑賞は、事前に4名のファシリテーターが、それぞれの年代別グループに分けて、前田真三作品を4点、現代写真家の作品を4点選び、40分弱の展示室での、対話をもとにした鑑賞の中で、グループごとに3-4点前後の作品を順にめぐりながら行われました。
 写真作品での鑑賞は、すでに具体的なものが画面に写っているために、その確認にことばが費やされ易く、そこからもう一歩踏み込んで想像を大きく膨らませることが難しい部分があります。そうした難しさを含みながらも、最初はどことなくぎこちなかった対話も、時間が経つにつれて、ファシリテーターとの呼吸も合うようになり、発言する順番を待つような活発な対話が行われるようになっていったように思います。

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低学年グループが石川直樹作品を鑑賞中


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大人のグループによる津田直作品の鑑賞


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高学年による石川直樹作品の鑑賞


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中学年による前田真三作品の鑑賞(作品は《夕焼けの塔》)


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鑑賞中の展示室3全景


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中学年による前田真三作品の鑑賞(作品は《蒼い流れ》)


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大人のグループによる石川直樹作品の鑑賞


 最後は多目的ホールに戻ってこの日の鑑賞についての「振り返り」を行いました。多目的ホールには、展示室で実際に鑑賞を行った作品のA3カラーコピーを貼った大きな紙が事前に壁に貼られました。鑑賞の間に考えたこと、話したことなどを、鉛筆でA5サイズの紙に書き、それを作品画像の周りに貼っていきます。

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振り返りで感想を紙に書く作業中


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書いた感想をそれぞれの作品のシートに貼っていく


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ファシリテーターによるコメント


 対象になったそれぞれの作品は、いずれも写真家たちが制作の現場で真剣に風景と対峙して生まれたものですが、鑑賞会の中で各参加者が作品と向かい合った末に口から出たことばや感想として書かれたことばは、時には作品が本来持つ作者の意図を超えて、作者も思いもよらなかった作品の異なる姿に一時迫っていたのではないでしょうか。
 なかなか想像力が発揮できないという難しさは少しあったとしても、そうした大切な時間をそれぞれの参加者が共有できる、大切な時間がつくられていたように思います。
 以下では、感想の紙が貼られた8点のシートをご覧ください。

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前田真三作品《夕焼けの塔》


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前田真三作品《松葉流れる》


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中里和人作品《惑星》


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前田真三作品《蒼い流れ》


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津田直作品《漕》


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前田真三作品《蒼い流れ》


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石川直樹作品《Mt.Fuji》


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石川直樹作品《Mt.Fuji》



  1. 2016/09/25(日) 17:15:10|
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中里和人さんのワークショップが行われました

 9月17日(土)、中里和人さんによるワークショップ「絵ハガキでつくる足利八景」が、8名の参加者によって行われました。まずは多目的ホールにて、中里さんが持ち込んだ様々なポストカードのセットを前にして、風景写真をポストカードにする意味のほか、撮影を行うエリアを示した市街図を手に、足利を撮影した写真から、いわゆる組み写真として8枚組のポストカードセットをつくる具体的な方法が語られました。

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 いよいよ街に出て撮影です。撮影エリアの鑁阿寺、細かい路地が入り組んでいる雪輪町界隈、古い街の名残が残る両毛線際の南銀座通りを、一時間半ほどをかけてそれぞれ撮影しながら、順にまわりました。

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 昼休みをはさんで、ポストカードとなる各8枚の写真を選ぶための講評が行われました。それぞれの写真をまずパソコンに取り込み、次々とプロジェクターで大きく壁に映す中で、中里さんが写真に対して、選択の理由も加えて実に的確なコメントを加えながら8枚の写真を選んでいきます。一人分の講評が終わると、選ばれた8点のデータをプリント担当のアシスタントの方に渡し、次の参加者の講評の間に、8 枚のポストカードが次々と出来上がっていきます。

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中里さんによる講評


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講評の合間にもインクジェットプリンターでポストカードが次々と出来上がっていきます


 8名全員のポストカードのプリントが終わると、計64枚を一堂に並べて、中里さんによる総評が行われました。作品は8枚が組み合わさることでいずれも個性が表れ、それぞれが歩いて感じた足利の景色が、他の方にも伝わってくるようなものになっており、実に多彩な足利の街を各参加者が楽しむ姿を見て取ることができました。

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以下、それぞれの方の作品を、8枚の中から1枚だけ抜粋して無記名にてご覧いただきます(これももう一つの足利八景といえるかもしれません)。

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  1. 2016/09/25(日) 14:39:16|
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コンサート「水の音、光の音」が行われました

 9月4日(日)「風景のかたち 前田真三と現代日本の風景写真」の関連プログラムとして、美術館入口ロビーにて、川島麻祐未さん(ピアノ)と大島麻依子さん(ピアノ、クラリネット)によるコンサート「水の音、光の音」が、80名近い観客を集めて開催されました。
このコンサートでは、展覧会で展示している前田真三作品などに、水にちなんだものが多いことにちなんで、そうしたモチーフを持つ作品の中から、バッハ、ドビュッシー、サン・サーンスなどの名曲、現代日本の加古隆の作品など9曲が、川島さんのピアノソロ、川島さんと大島さんのピアノ連弾、川島さんのピアノ伴奏による大島さんのクラリネットソロ、大島さんのピアノソロにそれぞれ分けて演奏されました。
 トークを交えての1時間近い演奏のあと、1曲のアンコール曲を加えて、美術館と音楽が一体となったような濃厚な場所がつくられていたように思います。

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当日のプログラム


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会場の全景


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川島さんのピアノソロ


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川島さんのピアノ伴奏による大島さんのクラリネットソロ




  1. 2016/09/14(水) 23:23:36|
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叶野千晶さんによるワークショップが行われました

 9月3日(土)、出品作家の叶野千晶さんによるワークショップ「うつす、あらわす、えがく -写真手彩色で風景をつくる」が、8名のご参加によって開催されました。
 手彩色写真とは、カラー写真がまだない時代、モノクロの写真に手作業で絵具を彩色して擬似的なカラー写真をつくる、幕末から戦前期にかけて行われた写真の手法です。特に明治期には、風景や人物、文化、芸能などをもとにしたものが一種の工芸品としてつくられ、日本に滞在したり旅行で訪れた外国人へのお土産用として販売されこともありました。
 今回のワークショップは、この古い手法を実際に行うことで写真の原点の一端を体験し、現像やプリントという作業が一般的には行われなくなった今、写真にまつわる手作業を楽しみつつ、その歴史に触れてもらおうという意図を含んでいます。
 まずは講師の叶野さんから、幕末〜明治期の写真や手彩色写真の歴史や、今それを行うことの意義などについての説明が、カラーコピーによる資料などを交えて行われました。

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 そのあといよいよ、全員で鑁阿寺に移動しての撮影です。鑁阿寺は足利でもっとも歴史が深い場所の一つで、今回の写真展の中で、叶野さんが出品作品一点を撮られた場所でもあります。こうした場所をモチーフにして、現代から昔を振り返り、そこでそれぞれが感じた何かを、手彩色という古い手法を通して表すことが、このワークショップの目標でもありました。
 撮影は、鑁阿寺の境内の中で50分ほどの時間をそれぞれ自由に撮って行われました。国宝でる本堂、鎌倉時代以来の大ケヤキ、庭園の池、庚申塔など、歴史が刻まれたモチーフに対して自由なアプローチがなされ、撮影を終えていったん解散。1時間ほどの昼休みをはさんで美術館に再び集まり、手彩色のベースとなる作品選びへと進みます。

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 それぞれが撮った写真を一人ずつ、パソコンに取り込んだデータをプロジェクターに映し出していきます。その中から叶野さんが、それぞれのモチーフに対する独自の視点や思いが伝わってくるような写真を務めて選び、各2点ずつの写真が選び出されました。

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 これをパソコンでモノクロの画像に変換し、叶野さんが用意した特厚の水彩紙(写真の黎明期に鶏卵紙を使ってプリントしていたことをふまえて、それに質感が近い紙が選ばれました)をポストカードよりも一回り大きめのサイズに切ったものに、インクジェットプリンターで次々とプリントしていきます。この間に参加者は、手慣らしのための試作として用意したモノクロプリントに、透明水彩絵具と細い筆で着色していきます。
 そしていよいよ手彩色によるワークの本番です。まずは最初の一点。透明水彩なので重ね塗りをしないと鮮明な色は乗りにくいこと、塗り残し場所のつくり方も意外と重要なことを、実際にお作業を通して体験していきます。さらに2点目。それぞれが一点目よりも、彩色することによってもとの写真のイメージがさらに広がるようなものがつくられていたのではないかと思います。

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 制作終了後は全ての作品を一所に並べて、叶野さんによる講評が行われました。ここでは、同じ場所、同じ時間を共有しながらも、8名それぞれが明らかに異なる風景の見方をしていたことがわかるような際立った違いを、作品から感じ取ることができたように思います。

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  1. 2016/09/14(水) 22:37:55|
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